『桃花源記の謎を解く 寓意の詩人・陶淵明』

沼口勝著『桃花源記の謎を解く 寓意の詩人・陶淵明』(NHKブックス 2001年)

タイトルには「桃花源記の謎を解く」とあるのですが、それだけではなくて、陶淵明が遺した漢詩「乞食」「飲酒」「擬古」に込められた寓意を、易経を軸に解いていきます。

漢詩を読むというのは、訓読して意味を調べて日本語に訳して内容を理解するにとどまらず、用いられる語彙が以前どこで使われていたのかということが重要になります。「典故」は何かということになるのですが、和歌で言えば「本歌取り」のような効果をもたらします。意識的にその語彙を使うことによって、典故となった作品の世界観を引き継いで、自身の作品の世界観を膨らましていくのです。

表面上は何気ない日常を詠いながら、実はその当時の政治や権力者を批判していたり、自身の秘めたる思いを吐露していたり。これを読み解くのは、まさに「謎解き」に近いものがあります。

陶淵明は遺した詩は140首ほどと言われ、それほど多くはありません。40歳頃に俗世間を捨てて、隠遁生活に入り、貧しくとも酒を呑んでのんびり暮らす詩人というイメージがありますが、実は遺された漢詩には自身の出自や自身の境遇と、時代の流れとの葛藤や苦悩があることが分かるのです。

この本には出てきませんが、例えば「述酒」という漢詩は酒については述べていないとか、「止酒」という漢詩は確かに酒をやめるぞ、ということが詠われているのですが、実際上は酒をやめたわけではないとか、まぁ不思議な点が色々あるのです。そしてそこには「寓意」があるのではないか、ということになるわけです。

それにしても『易経』を典故に用いているというのは初耳でした。ちょっとその推論は大胆じゃないのかっていうところもありますが、「飲酒」詩のあたりは、なるほどとうなりました。

もう少し陶淵明を踏み込んで理解したいという方、是非どうぞ。

コメント

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