「武」を分解すると。。。

2017年11月6日の産経新聞朝刊のコラム『産経抄』に、「武」という漢字に関する逸話が紹介されていました。
北朝鮮の核・ミサイルの脅威があり、北朝鮮とアメリカの間で戦争が起こるのではないかという情勢の中、アメリカのトランプ大統領が来日したわけですが、そこで次の様にあります。

 トランプ氏は、日本を「warrior nation」(武士の国)と呼ぶ。真意は不明である。「武」の文字は言うまでもなく、雄々(おお)しさ、あるいは戦いの力を意味している。

▼もっとも、古代中国の歴史書によれば、ある国の王が戦いにはやる家臣をたしなめる際に、「武」の文字が使われた。「武」を分解すれば、武器を表す「戈(ほこ)」を「止める」と書くではないか、というのだ。漢字の研究者によれば、間違った解釈らしい。それでも、現在の世界情勢を見渡せば、王の言うとおり、「武」には平和を願う気持ちがこめられている、と信じたい。

この逸話は、『春秋左氏伝』の宣公十二年にあります。

楚子曰、非爾所知也。夫文、止戈為武。

楚子曰わく、爾【なんじ】の知る所に非ざるなり。夫【そ】れ文に、止戈を武と為す。

白川静『常用字解』(平凡社)によると、

会意。戈と止を組み合わせた形。止は趾【あしあと】の形で、甲骨文字の字形は之【し】(ゆく)と同じで、行く、進むの意味がある。戈を持って進む形が武で、それは戈を執って戦う時の歩き方であるから、「いさましい、たけし、つよい」の意味になる。

とあり、『産経抄』の筆者はこの辺りもちゃんと抑えているようですね。

それにしても「いさましさ」や「つよさ」を表す「武」が、分解すれば武器の利用を止めさせる意味になるという解釈は、とても逆説的で、何か教訓を含んだようにも見え、思わず信じたくなるのも分かるような気がします。